サバイバルキャンプ@西表島【山編】からの続きです。
ジャングルの縦走からようやく出てきて、いよいよ船浮のイダの浜から西側の海を歩きます。
このルートは大潮付近の干潮の潮位が低くなるタイミングをねらって行きました。
>>Day 10【イダの浜〜網取湾】海ルート初日は文句なしの晴れ。
この日の昼の干潮は11時くらいだったので、
前後2時間を歩くとして、9時くらいにイダの浜を出発しました。
干潮の潮位は58センチ。
この数字がどのくらいなのかまだ初日の私にはよくわからなかったけど、
このルートのことをいろいろ教えてくれたナイヌ浜で会ったおじさんの、
「おれはいつも60切ったら行っちゃうね」という言葉を参考に、
60センチを下回るこの日に出発することにしました。
前日までの生い茂った山の中の細い道を歩くのと違って、
海岸はかなり開放感があってそれだけでテンションがあがります。
最初はなるべく水に入らないで行きたいと思っていましたが、
そんなことは無理だと出発後すぐに悟りました。
といってもまだこの時はひざ下くらいまで。
イダの浜の隣の砂浜を歩いていると、半分砂に埋もれたシルバーシートを発見。
砂をはらって広げてみたところどこも破れていない様子。
実はこの時ちょうどタープになるようなシートがほしいと思っていたのですが、
なんとこのシート、ラッキーなことに私がほしいと思っていたベストのサイズだったのです。
もちろん持っていくことにしました。
海岸の漂着物の多さに目を奪われながら、しばらく何事もなく歩く。
しかし、そのうち最初の難関がやってきました。
船浮のある半島とは別の細長い岬みたいになっているところの突端あたり、
上の地図ではサバ崎と書いてあるちょっと手前にコンクリートで作られた船着き場があって
そこから舗装された急な坂道を登って行くと灯台みたいな建物があります。
この灯台から反対側に下りられる道があるのかと思って行ってみたら
どうやら行き止まりでした。
このあたりの海岸沿いは断崖絶壁なので、なんとかしてここを突っ切って行きたかったけど
周辺一帯はアダンという葉っぱが硬くてトゲトゲの植物が生い茂っていて
それをかき分けて行くことは不可能に近い。
仕方なく海岸沿いのかなり高い崖の上を
アダンの木につかまりながら進んでみることにしましたが、
途中で足場もなくなりすぐにそれが無謀な挑戦だったということがわかりました。
これで海を歩くしか選択肢がなくなってしまったので
崖の下におりて海に下りられそうなところを探し入ってみることにしました。
水がきれいで透きとおっていて底が見えるのでだいたいの察しは付いていたのですが、
ズボンを股下までまくり足を入れてみるとやはり結構深く、
それでも足場を選んでなんとか進んではみたものの、恐怖心が先立ってしまい、
ひとまずまた陸に上がることにしました。
そして、もう一度なんとか頑張って崖の上を行ってみようと思い、
無謀だとわかりながらも最初行った時よりもさらに奥へ進んでいきました。
その時、「あれなに? 人?」という女性の甲高い声が、
おそらく少し離れたところを通っていた観光客を乗せたチャーター船から聞こえてきました。
この時の私は重いザックを背負って
断崖絶壁にロッククライミングのようにへばり付いている状態で、
先へ進もうにももはや無理で、かといって引き返そうにも
かなり慎重に行かないと危険という緊張感の中にいたので、
のんびり観光しているであろうその女性が少しうらやましく、
そんな危機的状況を遠くから見物されているのが恥ずかしくもありました。
このまま危険を冒して進んで行って万一落ちてしまえば
どうせすべてびしょ濡れだし、怪我もしてしまうかもしれない。
私は絶対そうならないという自信がなかったし、
どうせすべて濡れてしまうくらいならやはりある程度濡れるのを覚悟で
最初から海を行く方がいいと思いなおし、ふたたび下におりて海に入り
崖に手を付けバランスをとりながら意を決して歩きはじめました。
水深は私の腰あたりで背中のザックは何とかセーフ。
はじめはドキドキでしたが、進んで行っても水深は変わらず、
岩壁に手を付けながら注意深く足場を見ていれば意外と安全に歩行でき、
次第に慣れてきて水の中が気持ちよくさえなってきました。
なんとか無事に岬の反対側の砂浜に上陸成功。
この時はちょうど干潮くらいだったので何とか行けたけど、
潮位がもう少し高かったらまた状況は違っていたかも。
ここから網取湾の浜までは距離はあったけど特に難所もなく比較的歩きやすかったです。
ただ、途中いきなり前方から犬を連れたおじさんが歩いてきて、
船浮から西はほとんど人などいないと思っていたのでびっくり。
網取湾の浜に犬を連れたおじさんが住み着いているという話は聞いていたので、
すぐにその噂のおじさんだとわかりました。
この犬はあまり主以外の人には慣れていないのか、
すごい勢いでしつこく吠えまくられました。
「ベン!」
さっさと一人で先へ歩いて行ってしまったおじさんが
やっと犬を呼んでくれてようやく解放されました。
この日の目的地、網取湾の浜に到着。
砂浜を歩きながらブッシュの中にテントが張れそうな場所を探していると
一か所だけ大きく開けていて奥まで広い道ができているところを発見。
しかし、すぐにそこはさっきすれ違ったおじさんが
住んでいるところだと思いとりあえずスルーしました。
そこから少し離れたところに適当な場所が見つかりテント設営。
続いて水場を探しに行くことにしました。
ブッシュの中から砂浜に流れ込んでいる水の流れがあって、
その上流に行けばきれいな水がありそうな気がしたので沢の奥を目でをたどってみたところ、
どうやらさっき見つけたおじさんの住居に続いていると思われる道を
通って行くのが手っ取り早そうだったので早速、砂浜にある入口から入ってみました。
一応、「すいませーん、おじゃましまーす」とか言いながら。
・・・が、奥に行ってみてびっくり!!
ブッシュの中はガッツリ開拓されていて、かなり広いスペースが広がっていました。
網取湾ウダラ浜の開拓された土地
砂浜から見た感じではブッシュの中がそんな広くなっているとは
まったく想像がつかなかったので本当に驚きました。
その広い敷地の中にはブルーシートで作られた大きなテントが2つくらいあって
何よりも衝撃だったのは、それ以外のスペースにはさとうきびやバナナなどのほかに
しっかりと畑も作られていて何かの野菜も栽培している様子でした。
・・・すごい!!
私のやりたいようなことが目の前に広がっていたので、
驚きを通り越し、感動してしまいました。
こんなところにこんな感じでコミューンを作って生活したら楽しそうだ・・・
そんな妄想をしばらく楽しんでいました。
予想通りこの敷地の奥から流れていた沢で水を確保し、
簡単に水浴びをして、テントに戻ってみるとこれまたびっくり!
テントの入り口のすぐ手前をアリの大行列が横切っていたのです。
行列しているアリを払いのけても次から次に同じルートを通ってくるのでまったく意味がなく、
いろいろ試行錯誤してなんとかルートそのものを少し離れたところに変更させることに成功。
これはこれで楽しかったです。
夕方、潮が満ちて干潟が完全になくなったころ、私が食事の準備をしているときに、
小型の舟に乗せてもらっておじさんと犬が帰ってくる場面がありました。
湾はほとんど波もなく、とても静かで癒される夜でした。
>>Day 11【網取湾〜崎山】天気はくもり。強い風が吹いていました。
出発を予定していた干潮の2時間くらい前になるころには、
網取湾にはふたたび広範囲にわたって干潟が出現。
最初はその干潟をすいすい歩いていたものの、
湾の西側にさしかかるとそこは岩場を上ったり下りたりして進むルート。
しかし、そのうちどうがんばっても岩場を進むことができない場所が出てきました。
下りて海を歩くにも底がはっきり確認できず深そうに見えるので躊躇しましたが、
岩壁にへばり付きながら岩壁伝いに続く高い足場を慎重に確保すればなんとか行けそうでした。
それでも水位は私のベルトの位置くらいで、
少しでも岩壁を離れればどれだけ深いのかわかりません。
おまけにこの日は風が強く波が立っていたので水位が安定しないどころか
波の力でバランスが崩れそうにもなりました。
しかし、それだけでは終わらずさらに大変な状況が待っていました。
そこまで岩壁伝いに続いていた海中の足場が途中いきなり1メートルくらい切れていたのです。
引き返すことなどをちらほら考えたりなんだりしてしばらく立ち往生したあげく、
ようやく観念して、一瞬手の力だけで岩壁にぶら下がりその溝をなんとかまたぐことに成功。
こんな感じで岩場や岩壁がしばらく続き、海の中を結構長い距離歩くことになりました。
ちなみに背負っていたザックをあとで見たら下の方は濡れていました。
網取湾を出るのは本当に手強く、緊張の連続でした。
もしかしたらここが西岸ルートの最大の難所だったかもしれません。
やっとの思いで網取に到着。
網取は西表島にいくつかある廃村の一つで、現在は東海大学海洋研究所があります。
以前は週1回白浜と結ぶ定期船があったらしいけど、
それもなくなってしまったので、今では交通手段がまったくありません。
私のように船浮から歩いて来るか、船をチャーターして来ることになります。
特に何があるというわけでもないので
わざわざ網取に観光に来る人もほとんどいないと思いますが、
当時の村の跡が今でも残っているので、
私のように遺跡が好きな人にはなかなか面白いかもしれません。
網取村跡入口
網取村跡の碑
網取村跡
昼食休憩がてら網取村跡を少々散策した後、まもなく半島の西側へ回り
岩場を歩いたり砂浜を歩いたりを繰り返しまたひたすら歩き続ける。
途中、砂浜を歩いていると遠くに得体の知れない何かが見え、
近づいてみるとなんとびっくり、それはウミガメでした。
ウミガメに遭遇
しかし、よく見ると悲しいことにすでに息絶えていました。合掌。
産卵に来て卵を産むことなくそのまま力尽きてしまったのでしょうか。
網取湾をぬけて西側の半島を回ってくるとそこはまた湾(崎山湾)になっていて、
すでに干潮から1時間くらい過ぎていましたがまだ広大な範囲が干潟になっていたので、
多少足は沈むものの岩場や砂浜を歩くよりはるかに歩きやすく、
かなりの距離をショートカットできました。
引き潮でむき出しになったマングローブと小島
崎山湾の干潟
ちなみに、崎山も西表島の廃村の一つ。
今でも御獄が残っているという話を聞いたことがあるだけで、
他に何の情報もなかったので深入りしませんでした。
崎山湾を過ぎるとこの日の宿泊予定地と思われる砂浜に到着。
テント適地を探しながら浜を歩いていると、遠くに何やら動く物体が・・・イノシシでした。
私の存在に気づいてもそのままうろついていましたが、
ある一定の距離になるといきなり茂みの中へ猛ダッシュして行ってしまいました。
ちょっと砂浜の奥行きが狭い気がしながらも、
まあ大丈夫だろうということで適当なところにテント設営。
風が強かったけどここはブッシュの中にテントが張れなかったので風除けのために
早速数日前にゲットしたシルバーシートの設置を試みるもなかなかうまくいかず、
漂流物などをしようして思考錯誤の結果なんとかしっかり固定できました。
シルバーシート設置
浜の西の端に川の流れが止まって沼みたいになっているところがあって、
上流に行けばもしかしたら水場があるかもしれないと思い水溜りの脇を歩いていると、
突然、足が深く埋まってしまい、抜こうと思ってもう片方の足で踏ん張ると
さらに膝くらいまで沈んでしまい一瞬ヒヤッととましたが、
這いつくばってなんとか脱出成功。
結局、水にはありつけませんでした。
テントの前で夕食の準備をしているといつの間にか意外なほどに潮が満ちてきていて、
満潮でどこまで上がってくるか正直不安でドキドキしながらしばらく潮のラインを観察。
最終的にテントから5歩くらい(上の写真の切れ目あたり)まで来たところで、
なんとか無事に満潮の時間をむかえ次第に潮が引いて行った時は胸をなでおろす思いでした。
この日の夜は大きめのたき火をして、他に誰も人がいないということで、
素っ裸になって砂浜をうろうろしたり、火を見ながら原始人の気分を味わったりという
一人遊びをしました。・・・変でしょうか?
夜中に強めの雨が降ってきて、シルバーシートだけではすべてカバーできずテントの中に浸水。
雨の中、フライシートを張りました。
>>Day 12【崎山〜半洞窟】雨はやんだけどいまいちぱっとしない天気。風があり海は朝からしけてる。
この日の干潮は昼過ぎだったので、
午前中は暇つぶしに海岸に無数に散らばる漂着物を見物。
漂着物といえば聞こえがいいけど、要するに海岸のゴミ。
船浮からずっと海岸沿いを歩いてきてそのゴミの多さに驚いていたけど、
だんとつでいちばん多いのはペットボトル。
ペットボトルは尋常じゃないくらい大量に落ちてます。
ペットボトルがなかった時代はこれらのゴミがすべてなかったと思うと、
便利なものだけど、ちょっと考えてしまいます。
2番目に多いのが漁業で使う浮きやブイ。これはまあ仕方がないですね。
その他にはサンダルや、なぜか電球や蛍光灯も多かったです。
漂着物
しかし、私のようにキャンプしながら歩いていると、
これらの漂着物が役に立つ場面があったりもするのです。
もちろんペットボトルは余分に水を汲むのに使うこともあったし、
シルバーシートを設置するのに利用した竹(上の写真参照)と一部の紐も漂着物です。
さらにこの日はこんなものを見つけてしまいました。
未開封の韓国製のインスタントヌードル。
賞味期限らしき日付は一年くらい前でしたが、
もちろん後日ありがたく食しました。(決しておいしいとは言えない味でした)
さて、干潮1時間前くらいに出発。
歩き始めてすぐ、この日泊っていた浜が本来泊る予定だった浜の
一つ手前の浜だったことがわかりました。
海がしけてて波が高い中、沖のリーフの端に数人の人がいるのを発見。
このあたりにはもう人なんかいないと思っているから、
こうやっていきなり人に出くわすとちょっとびっくりします。
次の大きな浜(前日に泊る予定だった浜)に小型の船が停泊していて、
近場のリーフでも数人が下を見ながら貝でも探している様子。
沖にいる人も含めて男女総勢5〜6人。
この日くらいからかなり潮位が下がるので、海の幸を求めて
みんな同じ船で来たのでしょう。
この浜を過ぎたあたりの岩場が西表島の最西端地点で、
ようやくここから島の南側に入ってきます。
このあたりに来ると潮がだいぶ引いてはきたものの、リーフの端は依然波が高いまま。
波の余波がリーフの上にも伝わってきて多少の緊張感はありましたが
リーフの上を歩きはじめました。
場所によってはリーフが完全に干上がっているところも出現。
ひたすら歩き続けます。
干上がったリーフ
途中どこかいい場所があればそこでキャンプをしようと思っていて、
それでこの日は干潮1時間前に出発というのんきなスケジュールを組んでしまったけど、
このあたりの海岸沿いはどこまで行っても岩場の連続でテントが張れそうな砂浜がまったくなく、
思い切って鹿川を目指すことにしました。
海岸の崖に小さな滝になって流れる水場を横目に見ながら、
いちいちそこまで行くのも面倒だし、鹿川に行けば水場には困らないと聞いていたので、
持っている残りの水の量は心細かったけどスルーしていきました。
しかし、鹿川まで行くという計画が無謀なものだということをやがて知ることになります。
出発時間が遅かったせいもあり、次第に潮が満ちてきて、
リーフの外まで岩場が突き出ているウビラ石の少し手前あたりから
ふたたび岩場を歩きはじめました。
ウビラ石を過ぎたあたりにも少量の水場があったけど、スルー。
いつからか降り続いていた霧雨が次第に本降りになり、
岩場がつるつるすべりはじめてきました。
また海に下りてリーフの上を歩くことを試みるも、すでに太ももくらいまで潮が満ちていて、
波もあったので、もはや海を歩くことは困難。
しかし、岩場は体重を足にかけるのは危険で、
常に四つんばいでしかも慎重に行かなければならず、やがて気力体力とも落ちてきました。
こんな状況の中で、向かう先は見渡す限りどこまでも続く岩場。
鹿川には一向に着く気配がなく、正直途方にくれました。
岩壁がえぐれて半分洞窟みたいになっている場所があるという話を
このルートのことをいろいろと教えてくれたナイヌ浜で会ったおじさんに聞いていて、
それがこの周辺だったような気がしていたので、それが一つの希望でした。
とはいえ、水がもうほとんどなかったので、
その半洞窟の近くにもし水場があれば今日はそこに泊ろうと思っていたところ、
いつの間にかどこかから水の流れる音がしているのに気が付いたのです。
間もなく岩の間を勢いよく流れる水場を発見。・・・よし、水場はあった。
あとは話に聞いていた半洞窟が近くにあれば最高だ、と思いながら
少し先に進むと・・・あった!
なんとその半洞窟は水場からいくらも離れていないところにあったのです。
なんという幸運!
ただ、半洞窟の中は周辺と同様に大きな岩がごろごろしている岩場で
テントは張れそうもなかったので、泊ることを少し躊躇はしながらも
とりあえず水場もあって一晩雨をしのげる場所が見つかっただけでも良かったと思い、
適当なところにひとまずザックを降ろしました。
すると、ごろごろと大きな岩がひしめき合う中に、
なんと私のテントがちょうど張れそうなサイズの平らな岩があったのです。
実際にその岩の上にテントを広げてみると・・・なんとピッタリ!
なんという奇跡だ!!
名付けて「テント岩」
テント岩に張ったテント。奇跡です!!
半洞窟
これでこの日は何の迷いもなくこの半洞窟に泊ることを決めたのでした。
>>Day 13【半洞窟〜鹿川】半洞窟泊の翌日は干潮が午後。
午前中は瞑想したり、写真撮ったり(上の写真はこの時撮影)してのんびり過ごし、
干潮2時間前にはすでにリーフが見えていたので出発。
リーフを歩きながら海岸の岩場を見ていると、
途中、海を歩かない行けないところがあることがわかりました。
つまり、前日もし半洞窟を通過して雨でつるつるすべる岩場を
無理して進んで行っていたとしても、結局途中で先へは進めず
鹿川にはどう頑張ってもたどり着けなかったというわけです。
この時、あらためて水場と半洞窟、そしてテント岩に感謝しました。
鹿川はもうそんなに遠くはないという気がしていたし、
時間も余裕を持って出発していたこともあり気持ちにゆとりがあったので、
リーフの上を歩いているときに何度も目にしていたシャコ貝を
この日初めて採ってみることにしました。
よくわからないながらも、島の詳しい人に聞いた話を参考になんとか採取成功。
シャコ貝は大きいものになると貝殻がずっしりと重いので、
貝殻はその場に置いてきて中身だけ何かに入れて持って行くのが賢いです。
はじめての採取ということもあり、
その犠牲になってくれたシャコ貝に感謝の意味を込めて、
何も付けづにそのままの味で食いちぎって食べてみました。
貝柱はさすがにそのままでも美味でした。
それ以外の部分はおいしいと言えばおいしいけど、なんだかちょっと生臭く
やはりしょうゆに付けて食べたい感じでした。
シャコ貝をかじりながら、シャコ貝パワーでひたすら歩いていると、
鹿川手前の砂浜が見えてきて、ここまでくれば一安心と思い、ほっとしました。
この日は天気がよくとても快適に気持ち良く歩けましたが、
鹿川に向かって北上して行くこのあたりはサンゴがごつごつしていて、
足袋を履いているとずっと足つぼマッサージの上を歩いているような感じで
足の裏がかなり痛かったです。
干潮をちょっとすぎたくらいの時間にようやく鹿川到着。
砂浜を一通り歩いて見たあと、最終的に南の端の方にテントを張りました。
ここまで来る途中に釣り船を一艘見かけたのと、
鹿川湾の北側の岩場に停泊している大きな船があるくらいで、
浜には私以外誰もいない様子でした。
鹿川には洞窟があるという話や、その昔、一人のじいさんが
仙人のような暮らしをしていたという話を聞いたことかあったので
どんな所なのか来る前から興味がありました。
一段落して砂浜に流れ込んでいる川の上流に水場を探しに行こうとしたところ、
なにやら怪しげなどうくつを発見!
私は目の前に見ているその奇妙な光景に一瞬言葉を失いましたが、
やがて驚嘆し、アドレナリンがガンガン出てきました。
その洞窟には完全に人が住んでいた形跡あり、
それも原始人のようにただ洞窟に寝泊まりしていたのではなく、
何か得体の知れない材料を使って屋根や壁やドアなど(雨どいまである!)を自作して、
洞窟を利用した小屋のようなものを作って住んでいた形跡がはっきりと残っていたのです!
鹿川の洞窟全景
屋根接着部
雨どい
動画もあります
鹿川の洞窟
恐る恐る、しかし丹念に隅々まで観察させていただきました。
噂に聞いていた仙人のようなじいさんが作ったものなのか、
あるいは他の誰かが作ったものなのかわからないけど、
無人島だろうがどこだろうが生きていけそうなこの生命力に
私は驚きを通り越して深く感動し、尊敬してしまいます。
さて、鹿川到着のこの日は満月。
しかし、夜は雲がかかってしまい、この旅の最中ずっと楽しみにしていたのに
せっかくの満月を愛でることができませんでした。
>>Day 14【鹿川】この鹿川の浜にも大量に散らばっている漂着物を見ながら砂浜を散歩。
私はサンダルを持っていなかったので長距離を歩く時以外は基本的に裸足でしたが、
ここでは水場に行くときに裸足では少々不安な場所を通るので、
手頃なサンダルがあればと思っていました。
サンダルはあり余るほどたくさん落ちているものの、壊れていたり、
壊れてなくてもサイズが合わなかったり、サイズが合うのが右足ばかり見つかったりする中で、
ようやく両足見つけることができました。感謝です。
浜で拾ったビーサン
そしてもう一つ。
前日ここまで来るときにかなり痛くて、サンゴの上を足袋で歩くのはもうこりごりだったので、
底の厚い靴があればいいなあと思っていたところ・・・
なんと見つかってしまいました! 感謝です。
浜で拾った靴(左足はぶかぶか、右足はちょっときつめ)
靴はあまり数が少ない中でなんとか履ける靴を両足ともゲット。これは奇跡的です。
この日は今回の大潮でもっとも干潮の潮位が下がる日。なんとマイナス4。
干潮2時間前にはリーフが現れはじめました。
早速ゲットした靴を、これまた拾ったロープを巻いて足に固定し、
夕食のシャコ貝を採りにでかけました。
このあたりはリーフの上を30分も歩けば、
大小さまざまなシャコ貝をたくさん見つけることができます。
ただ、その中でどれを採るかが悩むところ。
夕食にはそれなりに大きいものなら2個採れれば十分なので、
いざ目の前に大きいのを見つけても、
もっと大きいのがいるかもしれないと思うとむやみには採れないのです。
そこで採らずに別のを探して歩きはじめ、
あとで採りに戻ってこようとしても同じものを見つけるのは困難。一期一会です。
どこで妥協するかという感じでした。
ちなみに私はシャコ貝一筋。他には何も採りません。
特に理由はないけど、その方が探すのもわかりやすいし、それだけで十分満足だからです。
シャコ貝
採ったシャコ貝は、貝柱や柔らかい部分は刺身で食べて、
あとは炊き込みご飯にしたり、味噌汁に入れたりして食べました。
すべておいしかったです。
シャコ貝の炊き込みご飯とシャコ貝の味噌汁
ちなみに拾った靴は、足の裏はまったくいたくなかったけど、
右足の靴がきつくて小指が痛くなってしまい、かかとが靴ずれしたので、
一日で履くのをやめました。
>>Day 15【鹿川】引き続き鹿川泊。
シャコ貝を採るのに使っていたきび刈りのナタを、
前日どこかに置き忘れてなくしてしまったのでどうしようかと思っていると、
偶然にも洞窟の中で小さなバールを発見。感謝です。
いろんな場面で何かとうまく事が運びます。
この日は昼に南風見田からカヌーで来たという親子連れが登場し、昼飯食べて帰って行ったり、
小型の船で来た地元の人らしき5〜6人が周辺でいろいろ採って帰って行ったりしました。
そして夕方、南風見田方面からバックパック背負った若そうな男の人が歩いてきて、
この浜で2、3泊するという話でした。
>>Day 16【鹿川〜ナイヌ浜】3泊した鹿川をいよいよ出発する日。
前日に南風見田から来た彼が、
となりの浜から登って行った山の中にあるという鹿川の廃村跡に行くという話を聞いて、
自分もかなり行きたかったけど、出発時間を気にして行くのも中途半端なのでやめました。
とはいっても、潮が引くのは昼を過ぎてからだったので、
洞窟の中に置いてあった手塚治虫の「天地創造」を読んで潮待ち。
鹿川を出発して南岸を東に30分くらい行くと
話に聞いていたこの旅の最後の難所がやってきました。
ここは6メートルくらいリーフが切れていて先へ進むことができず、
岩場を行こうとしても反対側が崖になっているので下りられないという場所。
ここを突破するには、反対側のリーフまで泳いでいく方法が一つ。
ただ、ここはサメが出るという噂もあって泳いで行く人はあまりいないようです。
もう一つは、山の中を迂回する方法。
これがいちばん現実的な道だけど、一つ問題なのは山に入る入口がわかりずらいという点。
私はこの山越えのルートのことを例の親切なおじさんに詳しく聞いていて、
入口には目印の浮きがあるということはわかっていました。
しかし、やはり噂どおりその浮きがぜんぜん見つからないのです。
一つ入口のようなところがあったけど入って行くと茂っているし、その前に浮きがない。
私は例のおじさんが見せてくれたこの山越えのルートが書き込んである地図を
携帯のカメラで撮らせてもらっていたので、それを何度も確認しながら行ったり来たりして、
ようやく目印の浮きが私の目に飛び込んできました。
結局、入口を見つけるまでに40分くらいかかりました。
目印の浮きを発見した時は絶叫するほど嬉しかったです。
途中、道に迷う場面もありましたが、なんとか出口あるの砂浜までたどり着き山越え成功。
ここまで来てしまえばあとはリーフの上をただひたすら突き進むのみ。
不安要素はもう何一つないスッキリした気分でした。
荒野のように見渡す限りの広大なリーフをどこまでも続くかと思われるほど歩き続けました。
広大なリーフ
途中どこかの砂浜で1泊することを考えていましたが、
体力的には問題なかったので、潮が満ちてくるまで行けるところまで行こうと歩き続けていると
今まで歩いてきた他のところと比べて南岸はリーフが高いみたいで、
もうとっくに干潮を過ぎているのにまったく潮が上がってくる気配がなく、
結局ナイヌまで来てしまいました。
行こうと思えばボーラや南風見田までも行けたけど、
あえてそこまでする必要もなく、この日はナイヌに泊ることに。
しかし、さすがにここまで来ると茂みの中はどこもテントがあって満室状態。
東の端の岩場の近くのちょっと奥まったところにちょうどいいスペースがあって、
浜からは丸見えだけど一泊だけだったので、そこにテントを張ることにしました。
リーフからナイヌに上がってすぐの岩場のところで
油断したのかダイナミックにすっころんでしまったことが、この旅の最後の試練でした。
>>Day 17【ナイヌ浜〜豊原】最終日は、慣れ親しんだきび畑を眺めながら
きび刈りでお世話になっていた豊原の家までのんびり歩いて帰り、
山の縦断から始まった16泊17日のサバイバルキャンプの幕を閉じました。
>>あとがき今回はじめて海岸を歩くということをしてみてまず最初にビックリしたのは漂着物の多さ。
海は世界とつながっている。そう実感させられました。
これをただのゴミの山と見てしまえば確かにそうなんだろうけど、
私のように最低限のものを持ってサバイバルキャンプする身にとっては
必要な物資の供給場所に見えてくるのです。
特に何の目的もなくどんなものが落ちているのか見ているだけでも面白いですが、
その中から使用可能な必要な物資を見つけたりするとさらに楽しいです。
もし万が一、無人島でサバイバルをすることになったら海岸で物資を探すのも一つの手です。
その島にはないいろんな役立つものが海岸に行けばあるかもしれません。
流木はもちろん、竹、板材、角材などもあり、
これらをロープや投網などをうまく使って組み立てれば簡易的な小屋くらい作れそうだし、
あるいはこれまたたくさん落ちている浮きやブイと組み合わせれば
イカダだってすぐに作れると思います。
イカダはよっぽど作ろうかと思いましたが、必要な場面がなかったので結局作りませんでした。
私は旅の途中、シルバーシートやサンダル、靴、ロープ、バール、
食糧(インスタントヌードル)などいろんなものを拾いました。
これは今までにこのブログでも何度か書いていますが、
必要なものを必要な時に必要なところへ与えてくれるという宇宙の法則を、
今回のサバイバルキャンプでも、こうやって毎回いろんなものを見つけるたびに
あらためて実感させてもらえたような気がします。
何よりもそれを感じたのは、半洞窟のゴロゴロした岩場の中で
ちょうど私のテントが張れるサイズの平らな岩を見つけたとき。
あれは奇跡的した。
さて、今回の一連の旅にサバイバルキャンプという言葉を使ってみましたが、
実際私がどこまでサバイバルすることができたのかその判断は人それぞれだと思います。
テントや寝袋、ライターや食糧などをまったく持たずに
大自然の中にほっぽり出されても生き延びることができる生命力。
これが私の究極の理想ですが、これはあくまでも理想というか憧れで、
実際はそこまで追求する気はありません。
この旅では大自然の中で動植物を観察する機会がたくさんあり、
その中で私がよく思ったのは、人間だけがいろんな持ち物を必要としているということ。
自然界に生きる動植物は、自分の食糧はもちろん、何か道具が必要だったとしても
すべて自然界にあるものでまかなうことができるのです。
暑かろうが寒かろうが雨が降ろうが、どんな状況であろうと自分の身は自分で守り、
本能のままにただ生きることのみに執着して瞬間瞬間を生きている姿こそ純粋で、
迷いがなく、自然の一部であり、自然と同化していて、
宇宙の完ぺきなリズムの中に生きているように私には思えて、
美しく見えるし、尊敬の念さえ湧いてきます。
自然に受け入れてもらいたい、自然の仲間に入れてもらいたい、
自然に生かされたい、自然とともにありたい・・・。
こういう気持ちから私は自然の中でサバイバルをしてみたくなるんだと思います。