北海道は
利尻島での昆布バイトを終えたあと私が向かった先は、
ウィンタースポーツで有名なニセコ。
といってもこの時はまだ9月。
私の目的はスキーでもスノーボードでもなく、
羊蹄山の麓で展開している自給自足コミュニティを訪れるためです。
そこは森の中にありました。
私がお邪魔した時は母屋の内装作業をやっているタイミングでした。
母屋は昨年から建設をはじめたそうですが、
そのほとんどの材料を解体現場などから運んできた廃材を利用していたり、
家の基礎や柱の何本かはもともと生えていた木を根っこごとそのまま利用していたりして、
いろいろと興味をそそられました。
内装はまず外壁と内壁の間に断熱材を入れるのですが、
余っている畳や段ボールなどを合うサイズにカットして地道にはめ込んでいくという
これまた建築の既成概念を取っ払ったやり方をしていました。
おかげで畳を切るのが上手くなりました(笑)
断熱材を入れ終わったら、発泡スチロールや段ボールで少しのすき間も逃さずふさぎ、
その上に石膏ボードをはって、最後に消石灰と麻すさ、
海藻のりを混ぜて作った漆喰を塗って
とりあえず寒くて凍える前に内装を完成させることができました。
私も近い将来自分で家を建てたいと思っていて、
それがログハウスなのかここのような在来工法なのかまだわかりませんが、
もし在来工法で建てるとなると内装が必要になってくるので、
今回ここで最終段階の漆喰塗りまで経験できてよかったです。
最近ではエコ住宅とかエコハウスと名の付いた家が売り出されていたりしますが、
解体されてゴミとなってしまうはずの廃材を利用して新しい家を建てることは
究極のリサイクルだし、これこそエコハウスと呼ぶに相応しいと思います。
さて、建築の話はこのくらいにして
ここでの毎日の生活のことも少し紹介させていただきます。
ここは森の中なのでもちろん電気も水道もありません。
電力は太陽光発電を利用していました。
発電機は使っていないので曇りや雨が続いたときなどは
夜になってバッテリーがなくなってしまうこともありましたが
そんな時はランプとロウソクが大活躍。
廃油を利用したランプなどもありました。
生活に必要な水は敷地内を流れる小川からホースで引いてきていました。
ただ、北海道の川にはエキノコックスという寄生虫がいるらしく、
念のため飲料水だけは羊蹄山周辺にいくつかある湧水スポットで汲んできたものを飲んでました。
風呂は野外でドラム缶の五右衛門風呂。
森の中で満天の星空を眺めながら入る風呂はかなりの解放感があります。
なによりも自然の中で素っ裸になるという行為が、
自分と自然との距離を近づけるような、自分も自然の一部という感覚になれて
なんとも心地が良かったです。
衣類の洗濯は洗剤を使わず、川でそれぞれ自分で洗っていました。
食事は玄米菜食。
食材はもちろん自分たちで作った野菜なども食べますが畑はまだ発展途上の段階で、
近くの農家さんにいただいたものや買ってきたものなどいろいろ。
私がいた時期はちょうどキノコの季節で、
すぐ目の前の森で採ってきたキノコを食べたりもしました。
台所は外にあって、薪ストーブとたき火で料理をするので
毎日キャンプをしているような感じ。
風呂にしても洗濯にしても料理にしても、とても原始的でワイルドな生活です。
そして、ここでは毎日夕食の前にその日の食事に感謝の気持ちを込めて、
みんなで手をつないで輪になって歌を歌います。
食事の前にお祈りをするのは欧米などでは決して珍しくない光景ですが、
そういう習慣のない現代の日本人には少し宗教的な行為に見えて
中には抵抗がある人もいるかもしれません。
私はまったく抵抗なく、むしろとても素晴らしいことだと思い、
毎日積極的な気持ちで歌いました。
これは「フードサークル」といって、毎年世界のどこかの国の大自然の中で開催される
レインボーギャザリングというイベントで行われているものらしく、
それに参加したことのあるここの家主が気に入って続けているんだそうです。
このフードサークルの歌。私は滞在中にすっかり覚えてしまいました。
素敵な歌詞なのでここで紹介させていただきます。
=WE ARE CIRCLING=
We are circling
Circling together
We are singing
Singing our heart song
This is family
This is unity
This is celebration
This is sacred
★日本語バージョン★
ぼくらは輪になる みんなで輪になる
ぼくらは歌うよ 心の歌を
それが家族 ひとつの家族
そして祝おう 聖なる日々を
そしてもう一つ。
私がいた期間、毎晩日課のようになっていたのがバジャン(Bhajan)です。
バジャンとはインドの神々を讃える歌で、たくさんの歌があります。
家主のこうちゃんはインド滞在歴が長くヨガのインストラクターもやっていて、
ヨガのプログラムの中にもバジャンの時間があるのだそうです。
私もインドは何回か旅したことがあるのでバジャンはとても親しみやすく、
いつの間にか毎晩歌うバジャンの時間が大好きになってしまいました。
バジャンは歌に没頭して自我を忘れることが目的の一つらしいのですが、
実際それくらいのレベルまで行っていたと思えるほど毎晩盛り上がっていました。
ある日のバジャン 「Shiva Shambo(シバシャンボー)」
日中は建築や畑作業をやって、夜はみんなで歌を歌うという生活スタイルは
このブログで以前紹介した「
バリ島モデル」に通じるものがあると私は思いました。
一見シンプルでただ昔の生活に戻っているだけのように感じる人もいるかもしれませんが、
こうした精神性を重要視した生活スタイルはとても近未来的なものだと私は感じます。
この場所のこと、ここの家主のこうちゃんのことは
もともと長野の
ふりだし塾で知り合った友達から聞いて知ったのですが、
さらに今年の春に行った京都の
ヴィパサナで知り合った友達が
話すと偶然にもこの近所に自分で建てたドームハウスに住んでいて
ここにもちょくちょく出入りしているという人だったりして、
そういういくつかのめぐり合わせに私は何かの縁を感じてこの場所を訪れました。
約一ヶ月の滞在期間中には、
鍋や食材などを持って羊蹄山の頂上でキャンプをしたり、
一週間くらい道東をキャンプしながらの温泉ツアーに出かけたり、
この場所で何回か行われたヨガ合宿に参加したりと、
とても濃密で充実した時間を過ごすことができました。感謝です。
家主のこうちゃんやその仲間たちと一緒に生活するなかで感じたのは、
その原始的でワイルドな生活がすでに身体に染みついているカッコよさ。
また、自然と共存していこうという意思を強く感じました。
「家を建てたことで自然から一歩遠ざかってしまった」
こうちゃんのこの言葉がとても印象的です。
トム・ブラウン・ジュニアの本などを読むと
ネイティブアメリカンの生活は自然と完全に一体化していて、
これこそ究極のワイルドライフと思わされますが、
現代に生きる私たちにとってどこまでワイルドを追求するかというのは
なかなか難しい問題だと思います。
私は究極のワイルドライフである狩猟採集生活(できれば採集のみ)を
一度経験してみたいと思っているのですが、
今回ここに来てその思いがまた少し強くなったような気がしています。
この自給自足コミュニティは夏の期間、WWOOFのホストもやっているし、
ホームページもあるので興味がある人はコンタクトをとってみてください。
まだはじまったばかりで発展途上の段階なのがここの良さだと思います。
今後が楽しみです♪
天真らんまんな自給自足の生活。
http://toyako.net/index.html